特別企画「いじめと学校」出演者からのメッセージ
【特別企画に寄せて】池上 正樹
小中学生の不登校やうつ、子どもの自殺が増えています。また、「大人のひきこもり」に至った人たちの背景には、いじめや暴力など学校時代の恐怖体験の後遺症に今でも苦しみ続けている事例が少なくありません。
子どもたちにとって安心できない学校環境が放置されれば、親に心配かけまいと1人で頑張ろうとした子ほど追いつめられて命を失う事態にもつながります。しかし、学校内で起こっている問題は、なかなか外部には見えてきません。
一方、この夏に放送されたNHK土曜ドラマ『ひきこもり先生』では、そんな学校内で起こる不登校やいじめ、虐待などのリアルな問題が取り上げられました。「生きよう」「学校なんか行かなくてもいいんだ」「まずは大人が幸せになってよ」などのセリフは心に残るメッセ―ジとして、ドラマのどの回からも励ましと勇気をもらったという声が届いています。
そこで、今年度の全国大会は特別企画として、後の「大人のひきこもり」にも起因する「いじめと学校」をテーマに、子どもたちをこれ以上傷つけない安心できる学校環境が構築できるよう、それぞれ当事者の視点から語り合って社会に発信したいと考えました。
特別ゲストには、「ひきこもり先生」で当事者たちの困りごとに寄り添うスクールソーシャルワーカー・藍子先生役を演じられ、ご自身が母親でもある鈴木保奈美さんに思いを語ってもらい、皆で考えてもらうきっかけにつながればと思っています。
いじめ自死家族
篠原真紀(一般社団法人ここから未来 理事)
【プロフィール】
2010年6月7日、当時中学3年生だった次男、真矢(まさや)が「友だちのことを護れなかった」という遺書を遺し自死。
「困っている人を助ける。人の役に立ち優しくする。それだけを目標に生きてきました」という遺志を継ぎ、母親としての願い、想い、経験を伝え、いじめについて一緒に考える講演活動などを行っています。
【メッセージ】
いじめの多くは学校で起こっています。
そして子どもにとって学校は生活のほとんどと言っても過言ではありません。
いじめは子どもに起こるものではありますが、大人の問題です。
大人の誤った認識・考えで、いじめを悪化させたり、さらに苦しめたりします。
「いじめられたらやり返すくらい強くなりなさい!」「あなたにも悪いところがあるんじゃないの?」
「そのくらい我慢しないと社会に出て通用しないよ」「傍観者も加害者と同じ」
そんな言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
今回のトークショーで、正しい認識を持つヒントになればと思っております。
当事者本人
●とし(ひき桜運営)
【メッセージ】
私は中学校で不登校になり、それをきっかけに10年のひきこもりになりました。「いじめと学校」という問題は、その時だけのことでは無く、大人になっても社会・経済的に大きな不利を強いられ、いつまでも苦しめられる物だと思います。
その意味では8050問題は「ひきこもり当事者」が外に出たとしても続く問題であり、いじめは本人を通じて、その家族ごと苦しめるものだと思います。
「ひきこもり先生」でも「加害者」のみを守ろうとする学校の姿がありましたが、一度のミスマッチで被害者となった子は、それだけで苦しい状況に追いやられる事実があります。そんな学校を変えることは可能なのか、一当事者としては今後、少しでも良い人生があるのかを考える時間になればと思います。
ひきこもり家族
●山本 洋見(KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事 NPO法人てくてく理事長)
【メッセージ】
それまで5体満足で健やかに育ち、成績もよかった中学生の息子が、1992年、転居による転校先で苛烈ないじめに遭い、29年後の現在、脳症で倒れたのち生き延びて、障害手帳2級、高次脳機能障害となり、グループホームに入居、日々生活介護事業所に通う毎日です。その間の息子の葛藤、努力、そして絶望を目の当たりにした家族も共に苦しみ、嘆き、社会を恨み、自分を責めました。その間、家族会を立ち上げ、kHJに加入、そのおかげで家族は前向きに生きることが出来ました。そして同じ悩みを持つ家族が日本全国に存在することを知り、家族が希望を捨てず前向きに生きて行けるよう、インクルーシブな社会を目指して行きたいと考えています。
いじめは主に学校で起きていますが、職場や団体等人が集団で存在する場所いたるところ、いじめは起きています。人間という動物は同種族を殺傷し、いたぶる本質があるのか、と思わずにいられません。
いじめ防止対策推進法が2013年に公布。法律を制定しなければならないほど、いじめは深刻で、2019年度、学校でのいじめの認知件数は過去最高、61万2496件、そのうち児童生徒の自死は300人を超えています。この現状を踏まえて、経験者である私たちは声を上げ続けることが必要です。
そして社会のありようが子供たちを追い詰めている事を、今回のトークショーで多くの大人に理解していただきたいと思います。
●高和 洋子(KHJ全国ひきこもり家族会連合会理事 KHJはぁとぴあ家族会 理事長)
【メッセージ】
私は日頃、多くの方々から、いじめや不登校ひきこもりの御相談を受けていますが、近年いじめは、増々低年齢化し深刻な内容になってきています。無視や排除に始まり、持ち物隠しや傷つけ行為がより陰湿に、また潜在的に日常化してきています。それがエスカレートすれば、待ち伏せや暴行に及びます。このような被害を受けた子どもたちは、身の危険を感じながら、日々不安と恐怖の中で過ごしています。「親に心配かけたくない」という思いから、殆どの子供は親に相談していません。誰にも相談せず一人で抱え込むうちに、心も体も疲弊し、時には自分を保つことが困難になる程、憔悴しきってしまいます。いじめによる心と体へのダメージは大きく、不登校やひきこもり精神障害などを引き起こし、その後の人生を大きく左右してしまいます。そうならない為に、早期の対処が求められますが、まずは危険な環境から身を守り、それ以上エスカレートしないように「避難すること」であり、傷ついた心を放置しないことが最優先であると思います。
悩みを抱え込まない為には、一時避難場所が必要です。温かく迎えられ、安心して過ごせることが、何よりの回復への早道となります。居場所を開設して六年経ちましたが、子供達は心から元気になれば、また勉強への意欲を取り戻し、学校に戻れたり、戻れない場合でも、自立に向けての資格取得に取り組んだり、将来像を描けるようになっていきます。子供達の居場所はこれから増々必要となるでしょう。全国各地域で居場所が増えていくことを願っています。
鈴木保奈美(女優)
<鈴木保奈美 コメント>
「繊細なテーマですが、怖気付かず、正面からぶつかっていこうと思っています。
迷い道で立ち止まるすべての人へ、生きたいと願うすべての人へ、スプーン1杯の微笑みを届けることができれば、わたしたちも生きていける気がします」
【ドラマ『ひきこもり先生』制作発表時コメントより】
<鈴木保奈美 プロフィール>
1966年生まれ 東京都出身A型
1986年 TVドラマでデビュー
1991年 主演したフジテレビ月9ドラマ、『東京ラブストーリー』が大ヒット。
ミセス(文化出版局)コラム2009年1月号~12月号連載。
GOLD(世界文化社)コラム2015年1月号~2016年3月連載。
*婦人公論(中央公論新社)コラム2017年4月より連載中。
*2020年12月9日『獅子座、A型、丙午。』初の著書発売。
趣味:日本舞踊・茶道・乗馬
嫌いな食べ物:柿・スイカ・辛いもの・カレーライス(嫌いでは無いのですが食べると眠くなるため)
*2021年12月9日配信・Netflix映画・劇団ひとり監督『浅草キッド』麻里役
*2020年〜 公式Instagram開設
https://www.instagram.com/honamisuzukiofficial/