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KHJ全国ひきこもり家族会連合会

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KHJジャーナル「たびだち」94号(2020年夏季号)から、「[座談] オーソリティーたちの生き方」の一部をご紹介!


座談 オーソリティーたちの生き方
「ひきこもる」ことの価値の転換が起こるアフターコロナ

親たちよ、スマホを持て! この危機をチャンスにするため変化しよう


コロナショックにより、さまざまな会合、イベントなどが中止となり、「居場所」が奪われる昨今。一方で、歴史的に見ても新たな価値や概念の誕生は危機のときでもあった。この危機を単なる危機で終わらせないために、ひきこもり家族会はこれから何ができるのか、池上正樹と〝オーソリティー〟の3人が語った。

― 登壇者プロフィール―

■池田 佳世(いけだ・かよ) KHJひきこもり家族会連合会 前代表・名誉会長
臨床心理士。ひきこもりの本人、親に関わって30余年。カウンセラーとして防衛省、東京都公立中学校、私立中高学校などでカウンセリングを行い、フレンドスペースで初のひきこもりの居場所を作る。また、親の学習会も開始した。「SCSカウンセリング研究所」を設立、現在会長理事。また、「KHJ東東京楽の会」代表を10年務めた後、「NPO法人KHJひきこもり家族会連合会」代表、現在名誉会長。2017年、「OSDよりそいネットワーク」を設立、共同代表に就任。著書に『「困った子」ほどすばらしい』『新「困った子」ほどすばらしい』(ともにハート出版)がある

■伊藤 正俊(いとう・まさとし) KHJひきこもり家族会連合会 共同代表
1991年に山形県米沢市で「登校拒否の子を持つ親の会」を設立。1995年には同市で「ひきこもり家族会」(2003年に改称)を立ち上げた。2006年、NPO法人「から・ころセンター」を開設。ひきこもり本人の居場所を開設・運営。2010年、同センターが就労支援事業所として山形県より委託。その後、就労継続支援B型作業所も受託し、高齢者宅への宅配事業やレストラン事業を運営。2005年、「KHJ 全国ひきこもり家族会連合会」に山形県支部として参加、 2014年に副理事長に就任。2016年、同会の共同代表に就任

■中垣内 正和(なかがいと・まさかず) KHJひきこもり家族会連合会 共同代表
1 9 8 3 年新潟大学医学部卒業、1987年新潟県立精神医療センター赴任。1996年医学博士、「新潟精神医学賞」受賞。また、県立精神医療センター「しへき治療棟」の開設に係る。2002年同診療部長。2003年第14回日本嗜癖行動学会(斎藤学理事長)長岡大会の大会長を務める。2005年医療法人佐潟荘に赴任、「ひきこもり外来」「アルコール外来」「摂食外来」を開設。2014年に論文「ひきこもり外来の実践」が「医学のあゆみ」誌に掲載。2015年「ながおか心のクリニック」開業。2011年に「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」副代表、2016年同会共同代表に就任

■池上 正樹(いけがみ・まさき) ジャーナリスト
23年前から「ひきこもり」関係の取材を続け、東日本大震災後は被災地で、ひきこもり当事者が震災でどう行動したかを調査。東京の対話の場「ひきこもりフューチャーセッション庵-IORI-」の設立メンバー。NHK『クローズアップ現代+』『あさイチ』などテレビやラジオも多数出演。著書は『ルポ「8050問題」高齢親子“ひきこもり死"の現場から』(河出書房新社)、『ルポひきこもり未満~レールから外れた人たち』(集英社新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社/共著)ほか。日本文藝家協会会員、YAHOO!オーサー。「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」広報担当理事


コロナ渦中の「ひきこもる意味」

池上 中垣内先生は学生運動の時代を経験されているんですよね。今のコロナの状況にも、似たような空気を感じるところはありますか。
中垣内 今の人たちの方がもっと大変ではないでしょうか。学生運動の頃は、高度成長という救いが待っていましたから。高度成長の後に、バブルが崩壊して長い不況となり、今は社会がただならぬ荒れ方をしていると感じられる事件が相次いで起きていますよね。会社でも教育でも家庭でもあいまいにしていたことの決断を突き付けられる状況に加速度がついてきました。外来の患者さんでも、コロナ離婚、コロナ不眠やうつからコロナ精神病まで苦しむ方が激増中です。
池上 池田さんは、今のコロナの状況をどう見ていますか。
池田 コロナ後の社会は、かなり変わる。ひきこもり界にとっては幸運なんじゃないかと思っています。密閉、密集、密接の「3密」を防ぐような生活は、ひきこもり当事者にとっては無理なくできる。自宅で仕事をすることもどんどん可能になる。ひきこもりしてる本人たちにとっては、チャンスになりえるはずなんです。
中垣内 ひきこもりの人は、自粛をとてもよくできる人たちという言い方もできますが、もともと能力があるのに活動しないという意味では過剰な自粛ともいえます。本人も実感していると思いますが、コロナ禍は社会の側がひきこもりの意義、自ら自粛する意義を見直すことになると思われます。手洗いをし過ぎてしまう強迫神経症とか潔癖症とか言われる人たちも、自分の行動の原点が極めて重要な保健衛生的な配慮から来ているのだと見直すことができます。社会全体の価値観が変わって、ひきこもることの意義が、広く受け止められるようになる。そういうチャンスが到来したと思います。
池田 私は「OSDよりそいネットワーク」という団体を立ち上げ、ひきこもりのO(親が)S(死んだら)D(どうしよう)ということで、生きづらさを抱えている方々が安心して暮らしていける社会を目指した活動をしています。そのOSDで無料の電話相談を始めました。こういう時こそ、家族で「快話」をしてくださいと伝えています。「快話」の具体的な方法としては、「そう」という言葉を言いながら、心を込めて聴いてあげる。「そうそう」と同意したり、「そうだね」と共感したりするのです。それ以上のことは言わない。そうして家族の中で「快話」していくと、本人は元気になっていくのです。
池上 そういう時間のチャンスであるということですよね。一方で、共感とか許容とは正反対の「自粛ポリス」の動きも起こっています。
伊藤 戦後の社会は、みんなとつながりたい気持ちと同時に、人間関係の煩わしさから離れてひとりになりたいという、相反する気持ちを育ててきたような気がします。ですから、ひきこもることは何も悪いことではなく、人間が本来持っている気持ちなのだと思います。けれども、誰ともつながれないのも、また苦しい。やはり、人は世間体の中で生きているのだなと思うのです。その世間体とどう付き合うか。これは個々の問題でありながらも、社会的な問題でもある。だから、私たちひきこもりの子を持った親は、「自分はこう生きていくんだ」という気持ちを強く持ち続けないといけないと思っています。

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