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内閣府の40歳以上ひきこもり実態調査に対する見解


内閣府の40歳以上ひきこもり実態調査に対する見解

2019年3月29日
KHJ全国ひきこもり家族会連合会
共同代表 伊藤 正俊
中垣内 正和

 今回の調査では、40歳代以上においても、これだけ数多くのひきこもる当事者がいることが明らかになったことがポイントだ。これまでも私たちの中では、40歳代も数多くいることはわかってはいたものの、それを裏付ける数字が国のエビデンスとして初めて示され、客観的に受け止めることができた。
また、専業主婦や家事手伝いと言われてきた中にも、ひきこもっている人が一定数、存在していることがわかり、男性だけにある問題ではなく、見えなかったひきこもり層も新たに顕在化したと思う。
これだけたくさんの人たちが長期化している要因や背景についても、なぜ本人や家族が相談につながれなかったのか、せっかく相談に行っても適切な見立てをしてもらえず、支援の対象から落とされる人がたくさんいるのはなぜなのか、皆できちんと検証していかなければいけない。
ひきこもり状態になったきっかけは「退職したこと」が最も多かったことについては、何らかの理由で職場から離れた人の中に、多くの方が社会に戻ることができずにひきこもる状態になっている現実を見ても、昨今、職場環境が劇的に変わってしまったことが考えられる。
有効求人倍率が上がって雇用は良くなっていると報じられているが、コスト競争に追われる職場環境の「働きづらさ」は改善されたわけではない。職場での不安定な待遇やハラスメント、いじめ、恐怖体験などによるトラウマで、就労するのが難しいという現実もある。
今の社会構造では、1度レールから外れてしまうと、なかなか元のレールに戻ることができない。復帰したいと思っても、自分の望むタイミングでサポートを受けられるような選択肢がなく、画一的な支援しか用意されていなかった。
社会に戻るというと、不登校なら「学校」、学校を出てからのひきこもり状態なら「職場」という狭い選択肢しかない。それぞれの状況や特性に合わせた、もっと多様な生き方が保障される社会を準備しなければいけないと思う。
雇用されることが前提でつくられた従来の制度設計を見直し、福祉や教育も含め、人それぞれが生きていくために必要なサポートを受けられる仕組みづくりを皆で考えていかなければいけない。これからの支援の施策をつくるにあたっては、家族や本人を交えた協議の場を設けて頂きたい。
国においては、この調査結果をすべての自治体の相談窓口や支援部所に下ろして頂き、ひきこもる人の気持ちや特性を理解できるスタッフの配置や、理解を深めるための研修によって人材を育成し、細やかな支援をすると共に、ひきこもり対策推進事業の着実な実施により、障害の有無や年齢、性別に関わらず、すべての国民の誰もが生きやすい社会の実現に努めて頂きたい。

内閣府の調査結果はこちら

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