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KHJジャーナル「たびだち」95号(2020年秋季号)より、荻上チキさん座談会の冒頭をご紹介!


【座談会】荻上チキと当事者たちと池上正樹

座談会タイトル

荻上チキ池上正樹

コロナが拍車をかけた 排除を正当化する論理

池上 本日のテーマは、コロナ禍の新しい生き方、「ライフシフト」です。荻上さんが最近配信された動画「戦争といじめ」を見ると、ひきこもり本人や家族が置かれてきた状況、差別の構図が戦時中と重なる部分が多いと感じます。最近も地方へ行った時、外に出られない我が子の状況を見た父親が「もう徴兵制にするべきじゃないか」と真顔でおっしゃるのを聞きました。荻上さんは、今日のひきこもりをする人たちという視点を通して考えた時、どのようなことを感じられますか?

荻上 ひきこもりに限らず、不登校とか再就職においてもいろいろなセーフティネットやメンタルヘルスのケアの装置を、この社会は作り損なってきていて、そのツケを当事者個人に押しつけるような構造があります。だからこそ、「徴兵制にすればひきこもりはなくなるんだ」というような陳腐な暴論に飛びつきたくなる。これは以前よりはマシになっていて、当事者の顔や声が届く状況になってきたとは思います。ただ、それでも社会抑止の言論が成熟したとはまだ言えない状況があります。

池上 まさに、異質なものを許さない社会の雰囲気がまだまだある。そうした日本的な空気の中で、家の中で我慢の生活を強いられる状況がコロナによっていまだに続いていると感じます。

ゆま 社会に役に立つかどうかという線引きでいじめや差別、排除が行われていて、正義感を盾にして排除が正当化される社会がいまでもあります。

なお 私は中学の時にいじめを受けて、2年間不登校でした。正義のためなら排除してもかまわないという論調が戦時下にもあったと思いますし、いまコロナで同じことが起きている。

成瀬 最近の状況と戦時中の空気が似ているのはすごくいやだなと思っています。異質な人たちを排除したがる人が「社会のため」という口実を使って個人の苛立ちや不満、怒りや怨念みたいなものをぶつけていると感じるんです。人をいじめたりする人は、自分のやりたいことがないんだろうと思います。自分の夢中なこととか好きなことがあったら、人のことを気にしている暇がないはず。あと、やりたいことはあるけど、できていない人も自分の人生とか日常にイライラしてそのエネルギーが他人に向かう。そういうのを理屈以上に感覚でひしひし感じています。

池上 ストレスの原因って一体何なんだろうということと、相互監視社会っていうのがありますよね。

荻上 僕がやっている「ストップいじめ!ナビ」といういじめ防止の活動の観点から言うと、人はストレスが増大すると他人に対して攻撃的になることが過去の研究で明らかになっています。これは職場でも学校でも家庭でも同じように起こる。だから、いじめが起きないようにするには3つあって、……

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